小夜時雨の宿
- 2008.
- 03.
- 31
- (Mon)
- 23:59
水原とほるさんの小説です。イラストは夏珂さんです。
妙に惹かれる水原とほるさんの小説。
こちらの『小夜時雨の宿』は、すごく好きかも。
どんなお話かと言いますと・・・
長年付き合っていた恋人に一方的に別れを告げられて一年が経った。
ある日飯島佳史は、元恋人の病死を彼の弟・南方修司から聞かされる。悲しみと後悔に暮れる佳史。
そのあげく追い討ちをかけるように「病気だと聞かされて兄貴の元から逃げたんだろう?」と鋭く責め立てられ、憎しみの余りか陵辱されてしまう。
何も知らされていなかった佳史は修司の誤解に戸惑いを隠せず…?
(『小夜時雨の宿』書籍裏の内容紹介より引用しました)・・・というようなお話です。
あらすじに書いてある通り、最初の部分を読むと、「ああ・・・ね?こんな展開で結末はアレかな?」と。
が、しかし、シラける事も無く、最後まで読ませられてしまいました。
修司[攻]を甘んじて受け入れる佳史[受]の心情が、丁寧に書かれており、また、最後のほうには、修司が、心情を告白するシーンがあり、苦しく遣る瀬無い気持ちや屈折してしまった過程が明らかになります。
そして、最後の最後で「え?」と思うような出来事が・・・。
佳史の別れた元恋人(雄司)が病死した事によって、佳史に知らされる事となった真実の全ては、最後まで読まないと明らかにはなりません。
佳史の、過去の一方的な別れや雄司の死、また、修司の不可解な行動を、冷静に受け入れようとする姿は、年上らしく大人だと思いました。
そしてそれは、雄司との間に、6年間の確かな愛情や強い絆があったからこそ、ですよね?
そういう確固たるものを築く事ができた人達だったからこその、選択と結末ではなかったかな?と思いました。
しかし、その、二人が6年間培った愛情と絆が、どれだけ修司を苛む事となったか?を思うと、こちらも非常につらかったです。
大好きな兄を失った修司の立場というものも、もの凄く複雑で、修司の、佳史への零れ落ちてしまうほどの思いも、切なくて。それと、佳史へ取ってしまった行ないについての後悔も。
したがって、こちらの小説は、二人とも手放しでは喜べない恋のお話なので、明るい恋の話ではありません。
年齢を重ねた方向きのお話かもしれません。
佳史の、愛情のグラスの話は良かったな。
そのグラスは比べられるような物でも無くて、どれも大切で、でも、古い方のグラスは二度と手に取る事は許されないグラスなんだよね・・・なんて、シミジミ考えてしまいました。
そして、「そのグラスは二度と手に取る事は許されない」なんて、切なく思う事も、時が経つにつれて少なくなって行くという事も・・・。だから、並べて大切にしていたって良いんだよねー。きっと。なんて思ったりして。
そして、最後の最後の出来事で、修司は、佳史と雄司が別れた時の、それぞれの心情を理解する事によって、自分が取るべき道を決める事が出来たんじゃないか?と思いました。
修司にとっては、まだまだ辛そうな道ではありますが、佳史は大人で潔いと思うので、修司の意志の強さと素直さで、二人とも幸せになれるといいなーと思いました。
ところで。
なぜかいつも惹かれて買ってしまう水原とほるさんの小説。
しかし、諸手を挙げて「これは、好き!」とか「いや〜、良かった!」とスッキリ言える小説は少ないのですよ。私は。
今回、ふと気がつきました。
水原とほるさんの小説特有の、一番最後の結びの言葉?っていうのかな?あの部分に、私は、どうも、拒絶反応(^^;)を示してしまうらしい、という事に。
いつも、最後の最後のあの部分で、「いや〜ん、せっかく良かったのに、どうしてそう結んでしまうのかな?」と思っちゃう事が多いんですよね。
こちらの小説も、アレな感じが残ったものの、それを差し引いても、良かった!と思えるお話でした。
しかし、いつもの水原とほるさんらしさは少ないお話で。
そこが、少々残念かな?
まあ、好みの問題ですから、こちらの点はお気になさらずに(^^;)
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- tag:水原とほる 夏珂
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entry: 小夜時雨の宿
COMMENTS
たった今読了しました(笑)
まひるさん こんばんは
この作品、何カ所かで評判が良かったので本日購入してしまいました。
この作家さん、最近知ったのですが独特のダンディズムを持っていらっしゃる方ですね…
どこか殺伐としている愛といいますか…
しかしそんな印象とはうってかわって、しっとりしんみり浸らせていただきました。
まひるさんのおっしゃるように、最初のあらすじで後の展開は完全に読めちゃうんですが(笑)
それでも、最後まで丁寧な心理描写に読者は引き込まれてしまって、泣けてきちゃいますね…
読んでよかったな〜と思えた作品でした。
まひるさんもお勧めのようで、嬉しいです♪
そうかも・・・
>摩緒さん
面白かったですか?良かったです〜。
ていうか、泣けますよね(涙)
>どこか殺伐としている愛といいますか…
そうかもしれないですね。
そう言われると、この方の書く小説は、胸キュン♥、だとか、激甘バカップルだとかは、無縁のような気がします。



